ある行旅死亡人の物語

身元不明で亡くなった方を「行旅死亡人」と言うそうです。

法律用語。官報で告知される。

表紙のイラストが可愛かったのと、この「行旅死亡人」という言葉に惹かれて読んでみました。

共同通信の記者の方が、官報で拾ったとある「行旅死亡人」の記事に出てた老女について、時間をかけて調べ、書き上げた本です。

その老女は、

3000万円の現金を金庫に残し、兵庫県尼崎市の自宅部屋で倒れ、ひとり死んでいたそうです。。

記者の方が調べてみると、

名乗ってた名前と本当の名前が違っていたり、保険金の受け取りを断っていたり、闇治療をする歯医者に通っていたり。。

謎が多すぎ。。

部屋には、可愛いぬいぐるみと子供の写真が数葉。

それに、借りていた部屋の契約とは違う苗字の印鑑が残されていました。

この苗字が珍しかったため、身元が判明します。

それでも、この方が故郷を出てから、お亡くなりになるまで、なにをしてたかは、誰もわからず。。

謎のまま。。

ここまで判明するのに数年。著者2人は毎週末大阪から広島まで行き、取材を進めたそうです。

そんな記者の方のモチベーションに、起業家精神を感じました。

起業の世界でいうゼロイチからのスタート。他人から怪しまれたり、ケンもホロロな対応をとられたり。。

学生起業家にとっての、最初の顧客を見つける苦労と似ています。

そんなところも参考になりました。

なにより、この老女がどんな人生を送ってきたのか。。想像するだけでゾクゾクします。

自分の住んでる近所でも、2階建てのアパートをよく見かけます。公園にも毎朝缶ビール飲んでるお爺さんがいる。

コロナ前たまに話してたそのうちの一人は、鹿児島出身だと言ってました。コロナ後見かけなくなってしまいましたが。。。

孤独死する人も、若い青春時代があったんだろうなぁと思い起こすと少し切なくなります。

ある行旅死亡人の記録
著者:武田惇志・伊藤亜衣