ワーナー・ブラザース・ディカバリーとパラマウントの合併

先日、こんな記事が出ました。。

Warner Bros. Discovery, Paramount Global in Merger Talks, 2023.12.23, Todd Spangler, Jennifer Maas

The Burning Questions Swirling Around the Early Warner Bros. Discovery-Paramount Global Merger Talks, 2023.12.20, Cynthia Littleton

パラマウント(2022年度売上 301.5億ドル・4.2兆円)とワーナー・ブラザース・ディスカバリー(2022年度売上 303.8億ドル・4.3兆円)が合併するかも。。

とても巨大でダイナミックな話です。

この噂の背景には、どんな事情があるのでしょうか。。

①テレビ広告収入とケーブル会員数の減少

2023年は、両社とも「地上波の広告収入の減少」と「ケーブル局の会員数の減少」が続いています。

ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの2023年1-9月テレビ部門の売上は、163億ドル(2.3兆円)で、2022年(17.6億ドル・2,464億円)の8%減少でした。(同社の2023年度IR資料アーカイブ

パラマウントのテレビ部門の売上も6%減少しています。2022年1-9月売上が158.5億ドル(2.2兆円)に対し、2023年同期は149.2億ドル(2.1兆円)でした。

パラマウントは、米国4大ネットワークのひとつ「CBS」を傘下に持っています。いっぽうのワーナーは、ゲーム・オブ・スローンズで有名な「HBO」やニュース専門局「CNN」など有料のケーブルテレビ局を持っています。

パラマウントのテレビ部門の広告収入は、2022年1-9月売上が66.7億ドル(9,338億円)に対し、2023年同期は59.0億ドル(8,260億円)で、前年11%の減少でした。パラマウント 2023年第三四半期IR資料

ワーナーブラザースディスカバリーのテレビ部門広告収入は、2023年7-9月期は、前年比12%減少し、17.1億ドル(2,394億円)でした。(ワーナー・ブラザース・ディスカバリー 2023年第三四半期資料

ちなみに、パラマウントの売上の67%、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーの45%をこのテレビ部門が占めています。

広告と会員数の減少により、主力のテレビ部門の低迷が続いているのです。

②ワーナー・ブラザースの債務

同社の2022年4Qのフィナンシャル・レポートによると、ワーナーの債務は450億ドル(6.3兆円)。パラマウントは179億ドル(2.5兆円)。

この巨大債務の支払うための、稼ぎ頭であったテレビ部門は不調です。

この打開策として、両社のコンテンツカタログ(ハリーポッターやバットマンなど有名映画など)を、両社が展開するOTT(Over the Top:ネット配信プラットフォーム)を統合し配信するなどの施策が必要だと考えているのでしょう。

③もちろん、Netflix

下記グラフは、ロイター社のWebサイトで作成したワーナー(オレンジ)、パラマウント(青)、Netflix(緑)の株価推移です。

いちばん右端が2023年12月末です。2016年以降、パラマウントもワーナーもNetflixに大きく離されています。

Netflixの会員数は、2.5億件。

ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリーのOTT会員数は世界で9,510万件(ARPUは7.82ドル)、パラマウントは6,340万件ですので、合わせると約1.5億件となります。これはDisney+とほぼ同数です。

ワーナーとパラマウントの合併で、第2位のOTTプラットフォームが誕生します。

映像コンテンツ市場のキャッシュポイントは、テレビ広告とケーブルテレビの有料会員収入でした。

その2大ビジネスが、Netflixの月額課金モデルに代替されつつある、という現状。

その打開策として、Netflix対抗の月額課金キャッシュポイント(OTTプラットフォーム)を作ろうという戦略です。

④世代交代

もうひとつ、自分が想像してるのは、アメリカメディア企業の世代交代です。

パラマウントを牛耳るシャリ・レッドストーン氏は、父親のサムナー・レッドストーン氏が2020年8月に亡くなって、後を継いでます。

サムナー・レッドストーン氏こそ、このパラマウント・CBS(ちょっと前までViacomと呼ばれてました)帝国を作った本人です。

FOXを立ち上げたルパート・マードック氏も2023年9月に引退を表明。

彼らは、1970-80年代、テレビの勃興で弱体化したハリウッド映画界に乗り込んできた人たちです。

そして、ビデオやケーブルテレビの普及の波に乗って、一度作ったコンテンツを違うメディアで金を稼ぐウィンドウ戦略で、ハリウッドスタジオを巨大化しました。

こうしたハリウッドを牛耳るモーグル(Mogul)と言われる人たちも、Netflixの勃興の波には乗りきれなかった。。

そしてシャリ・レッドストーンなど次世代の経営者は、新たな道を探ろうとしているのではないかと思います。

参考ロックメディア 第6回 コンテンツ・ウィンドウ戦略概論1: 50年で世代交代するハリウッド(2008年3月)

ロックメディア 第10回 コンテンツ・ウィンドウ戦略概論2: フィン・シンルール、映像のコモディティ化(2008年3月)

パラマウントについて

パラマウントは、傘下にトップガン、ミッション・インポッシブルなどの映画カタラグを持つパラマウント・ピクチャーズと、米国4大(テレビ)ネットワークの一つ「CBS」、それにケーブルチャンネル(有料テレビ:日本のCSチャンネルみたいなもの)である「CNN」「MTV」、それにスポンジボブを放送してる「ニコロデオン」等を保有しています。

元々、サムナー・レッドストーン氏は、CBS、パラマウントを統合し経営していたが、CBSとShowTimeなどテレビ部門をViacom(バイアコム)、映画部門はパラマウントとして分離させた。

その後、統合・分離を繰り返し、2019年にバイアコム(CBSなどテレビ部門)とパラマウント(映画)が合併し、2022年に、社名を「パラマウント・グローバル」とした。

ワーナー・ブラザース・ディスカバリーについて

アメリカの大手通信会社AT&Tが、2018年に850億ドルでTime Warnerを買収。2021年5月にケーブルチャンネルを運営するディスカバリーと合併させて、できた会社です。

ワーナー・ブラザースは、映画と、HBOなどケーブルチャンネルを傘下に持つコングロマリットですが、2001年に当時最大のインターネット企業「AOL」と合併。2003年には、雑誌「TIME」を発行するTIME社と合併し、タイム・ワーナーになりました。

そして、2018年にAT&Tに買収され、2021年に上記のようにディスカバリーとくっついて、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーとなりました。

参考記事:

AT&T to spin off WarnerMedia, basically admitting giant merger was a mistake WarnerMedia and Discovery to merge, and standalone AT&T will focus on broadband. JON BRODKIN – 5/18/2021

アメリカのメディア・コンテンツ市場構造

アメリカのメディア・コンテンツ市場は、ハリウッドスタジオを軸に、5プレイヤー(ディズニー、ワーナー、パラマウント、ソニー、ユニバーサル(コムキャスト)の寡占状態となっています。

もし、ワーナーとパラマウントが一緒になったら。。。さらに寡占化が進みます。

Netflixは、2009年にアメリカ最大手のケーブルテレビ「コムキャスト」の会員数を抜きました。上記のように2016年にはパラマウントやワーナーの株価を上回っています。

約10年かけて、メディア市場の再編を促すような、大きなインパクトだったことを改めて感じます。